死亡退職の年末調整とは?手続きの流れと源泉徴収票の正しい書き方!

  • 2026年7月10日
  • 日常
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従業員が亡くなられた際、人事・労務担当者として避けて通れないのが「死亡退職者の年末調整」です。

「通常の年末調整と何が違うの?」「いつ、どうやって手続きを進めればいいの?」とお悩みではありませんか?

デリケートな時期だからこそ、遺族への対応も含めて実務をスムーズに進めたいところですよね。

しかし、死亡退職者の年末調整は通常の手続きと異なる特殊なルールが多く、そのままにしておくと税務ミスや、後々の遺族間での思わぬトラブルに発展してしまう可能性があります。

そこでこの記事では、会計事務所の実務目線から、死亡退職者の年末調整の正しい進め方をどこよりも分かりやすく解説します。

タイミングや控除の判定、源泉徴収票の書き方まで網羅しているので、ぜひ実務の参考にしてください。

2. 【大前提】そもそも死亡退職者は年末調整の「対象」になる?

結論からお伝えすると、死亡退職者は時期に関わらず、死亡した時点で年末調整の「対象」になります。

通常の年末調整は「12月31日時点で在籍している人」が対象です。

しかし、年の途中で死亡退職した場合は、例外的にその死亡したタイミングで年末調整を行います。

これを実務上「随時調整」と呼びます。

ただし、全員が必ず対象になるわけではありません。

以下の表で、対象になるケースとならないケースを確認しておきましょう。

年末調整の対象になるケース 対象外になるケース
・年の途中で死亡退職した従業員(原則全員) ・本年の給与総額が2,000万円を超える場合
・「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない場合(乙欄適用者)

基本的には「2,000万超の役員などでない限り、亡くなった時点で年末調整をする」と覚えておけば間違いありません。

なお、乙欄適用の従業員だった場合の対応については、記事の後半で詳しく解説します。

3. 通常とここが違う!死亡退職者の年末調整「3つの特例」

死亡退職者の年末調整を難しくさせているのは、通常とは異なる「3つの特例」があるからです。

ここを勘違いすると税額計算が丸ごとズレてしまうため、しっかり押さえましょう。

① タイミングの特例:12月を待たずに「随時」実施する

通常の年末調整は11月〜12月にかけて一斉に行いますが、死亡退職者は「死亡したとき」にその場で年末調整を行います。

12月末まで待つ必要はありません。

なお、通常の退職とは異なり、死亡退職の場合は住民税の一括徴収を行うことはできません

未徴収の住民税は普通徴収へと切り替わるため、自治体への異動届出の手続きと合わせて、給与計算のフローを進めることになります。

② 控除対象扶養親族等の判定:「死亡時の現況」と「12月31日」の組み合わせ

配偶者控除や扶養控除、障害者控除などの対象になるかどうかは、「従業員が死亡した時点の現況」で判定します。

ただし、ここで実務上最も間違えやすい落とし穴が「年齢の判定」です。

【超重要】年齢の判定だけは「12月31日」が基準!

所得税法上(所得税基本通達85-1)、年齢の判定については例外的に「その年の12月31日時点」の現況で数えることになっています。

例えば、扶養親族が「今年の12月に16歳になる(通常なら扶養控除の対象)」というケース。

従業員の死亡時点(例えば8月)ではまだ15歳だったとしても、その年の12月31日時点で16歳になるのであれば、扶養控除の対象にすることができます。

「死亡時の年齢」で機械的に切り捨ててしまわないよう十分注意してください。

③ 死亡後に支給が確定した給与・賞与の扱い

もう一つの大きな線引きが、支給日のタイミングです。

従業員の死亡後に「支給日が到来する(支給が確定する)」給与や賞与は、年末調整の計算に含めてはいけません。

なぜなら、死亡後に確定した給与は本人の「所得税」ではなく、遺族が受け取る「相続税(みなし相続財産)」の対象になるからです。

  • 死亡日までに支給日があった給与 ➔ 所得税(年末調整の対象)

  • 死亡日以後に支給日がある給与 ➔ 相続税(年末調整の対象外・源泉徴収も不要)

この線引きを間違えると、源泉徴収票の金額も変わってしまうため、支給日ベースでの徹底的な確認が必要です。

4. 実務のステップ:死亡退職者の年末調整スケジュール

では、実際にどのような手順で実務を進めるべきか、4つのステップに分けて解説します。

①必要書類の回収:遺族へ配慮しつつ依頼。

「給与所得者の扶養控除等申告書」を確認します。

また、生命保険料控除などの証明書があれば提出を依頼します。

死亡日までに従業員本人が支払った(口座振替された)保険料のみが控除対象となります。

遺族が悲しみの中にいる時期ですので、四十九日を過ぎてから連絡するなど、状況に合わせた柔軟な配慮が大切です。

 

②死亡日までの給与・賞与の確定:対象期間の絞り込み。

前述の通り、「死亡日までに支給日が到来したもの」だけをピックアップし、その合計額を年末調整の「総支給額」として確定させます。

 

③税額計算と過不足金の精算:還付金の支払い先。

確定した給与額と回収した控除書類をもとに税額を計算します。

多くの場合、税金が戻ってくる(還付になる)ケースがほとんどです。

この還付金は、本人が生前に支払いすぎていた所得税の戻りであるため、法的には「被相続人(亡くなった本人)の本来の相続財産」に該当します。

会社が支給する際は、後々の親族間トラブルを防ぐために「相続人代表者」の口座を確認して振り込むか、遺族間で合意された方法で支払うのが確実です。

 

④源泉徴収票の作成と交付:手続きの完了

年末調整結果を反映した「源泉徴収票」を作成します。

これは遺族がその後に行う相続税の手続きや、医療費控除等を受けるための「準確定申告」(※年末調整でカバーできない控除がある場合など)で必要になるケースがあるため、迅速に発行して交付しましょう。

 

5. 後々のトラブルを防ぐ「源泉徴収票」の正しい書き方と提出

死亡退職者の源泉徴収票は、通常の退職者や年末調整済みのものとは書き方が異なります。

税務署から再提出を求められないよう、以下の3点を必ずチェックしてください。

  • 「死亡退職」の欄にチェックを入れる

    源泉徴収票の下部にある「中途就職・退職」の欄の「死亡」の項目に必ずチェック(または◯)をつけます。

  •  摘要欄(てきようらん)への記載

    摘要欄には「〇年〇月〇日死亡退職」と記載します。

    また、死亡後に支給した給与・賞与があり、それを今回の年末調整(所得税)から除外した場合は、「死亡後支給の給与〇〇円は除く(相続税対象)」などと書き添えておくと、税務署や遺族側での確認がスムーズになります。 

  •  受給者(交付先)は本人ではなく「遺族(相続人)」

    源泉徴収票の「本人の住所・氏名」欄は本人の情報で構いませんが、手渡しや郵送で交付する相手は「遺族(相続人)」になります。

【コラム】「乙欄」該当者が死亡した場合の注意点

もし亡くなられた従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない、いわゆる「乙欄(おつらん)」適用者だった場合は、会社で年末調整を行うことはできません。

この場合の対応は以下の通りです。

  1. 会社での年末調整は「行わない」

  2. 死亡日までに支給された給与ベースで源泉徴収票を作成する

  3. 源泉徴収票の「死亡」欄にチェックを入れ、摘要欄に「死亡退職」と記載して遺族に交付する

会社での精算ができないため、支払われすぎていた税金の還付などを受けるには、遺族側(相続人)が「準確定申告」を行って税金を精算する必要があります。

源泉徴収票を遺族へお渡しする際、「こちらは会社での年末調整ができない種類のため、遺族側での準確定申告が必要になります」と一言添えて差し上げると、非常に親切で実務的です。

6. まとめ

最後に、死亡退職者の年末調整における重要ポイントを振り返りましょう。

  • 死亡の時期に関わらず、死亡した時点で「随時調整」を行う

  • 扶養親族等の判定は「死亡時の現況」だが、年齢の判定だけは「12月31日時点」で行う

  • 死亡後に支給が確定した給与・賞与は、年末調整に含めない(相続税の対象)

  • 還付金は「本来の相続財産」となるため、相続人代表の口座へ振り込む

  • 源泉徴収票には「死亡退職」の記載をし、速やかに遺族へ交付する

死亡退職者の実務は、年に何度も発生するものではないからこそ、いざという時に慌ててしまいがちです。

税法の特例が絡む上に、遺族への心理的な配慮も求められる繊細な業務ですので、ぜひ本記事の内容を社内の「実務チェックリスト」として活用し、万全の体制で臨んでみてくださいね。