【会社法】身内や元役員から「非上場株を買い取れ」と通知が来たらどうする?社長が絶対にやってはいけない初期対応と実務の全手順!

経営から退いた親族や元役員から、突然『株を買い取れ』という通知書が届いた……と頭を抱えていませんか?

譲渡制限が付いている非上場株だから勝手に売れないはずなのに、いきなりこのような要求を突きつけられると、どう対応すべきかパニックになってしまいますよね。

しかし、経営陣の知識不足からこの通知をそのまま放置してしまうと、最悪の場合、会社の見知らぬ第三者に株が渡ってしまう、あるいは税務調査で巨額のペナルティを科されるリスクがあります。

そこでこの記事では、会計事務所のリアルな実務目線から、非上場株の買取請求が届いた際の正しい解決策と、社長が絶対にやってはいけない初期対応のNG例をどこよりも分かりやすく解説します。

目次

そもそも「譲渡制限のある株」なのに、なぜ買い取りを強制されるのか?

結論から言うと、会社の許可なく自由に売れない「譲渡制限株」であっても、株主には「売りたいから会社で承認するか、ダメなら会社が買い取ってくれ」と要求する法的な権利が認められているからです。

【会社法140条の基本】株主から「譲渡承認請求」が出された時の会社の義務

非上場企業の多くは、見ず知らずの第三者に経営へ介入されないよう、株式に譲渡制限をかけています。

しかし、株主には「自分の財産(株式)を処分して現金化したい」という当然の権利があります。

そのため会社法では、株主が第三者に株を売りたいと会社に「譲渡承認請求」を出した場合、会社がそれを拒否(不承認)するなら、代わりに会社自身か、会社が指定した人(指定買取人)がその株を買い取らなければならないと定めています。

つまり、会社側は「譲渡制限があるから買い取らない」と突っぱねることはできず、部外者を社内に入れたくないのであれば、最終的に買い取る義務を負う仕組みになっているのです。

【注意書き枠】「株主=同族株主・一般株主」など、立場によって変わる要求の重み

※実務上の重要チェックポイント

単なる口頭での「株を引き取ってよ」という不満や愚痴の段階であれば、まだ法的な対応を急ぐ必要はありません。

しかし、相手が会社法に基づいた正式な書面(譲渡等承認請求書・買取請求書)を提出してきた場合は話が別です。相手が親族(同族株主)であれ元役員(一般株主)であれ、書面が届いたその瞬間から、会社は法律に則ったタイトな防衛スケジュールをスタートさせなければなりません。

【期限はわずか14日】通知が届いた瞬間に社長が絶対にやってはいけない初期対応

株主から買取請求の書面が届いた際、社長が絶対にやってはいけない最悪の対応は「様子見」や「無視」です。なぜなら、会社法が定めるタイムリミットは驚くほど短いからです。

【最悪の落とし穴】「無視して放置」は一発アウト!自動的に見知らぬ第三者への譲渡が承認される恐怖

法律上の結論を言うと、通知(請求)が届いた日から原則「14日(2週間)」以内に、会社が株主総会や取締役会で「承認・不承認の決定」をして相手に通知を買い戻さないと、自動的に譲渡を承認したものとみなされます。

もし相手が、会社にとって不都合な第三者や、いわゆる買収ファンドなどを譲受人(買い手)として指定していた場合14日間放置するだけで、その怪しい第三者が正式な株主になってしまいます。

一度株主名簿に載ってしまえば、帳簿の閲覧請求をされたり、経営を裏から揺さぶられたりするリスクが一気に跳ね上がります。

【実務のリアルな裏話】「売買価格」が決まらなくても、まずは「不承認の通知」を先に出さなければならない理由

実務の現場で非常に多い致命的なミスが、「いくらで買い取るか、価格の交渉で揉めているうちに2週間が過ぎてしまった」というケースです。

ここで覚えておいてほしい実務の鉄則は、「価格の交渉は後回しでいい」ということです。

まずは2週間という期限内に、「今回の譲渡は認めません(不承認)。代わりに会社(または指定買取人)が買い取ります」という意思表示の通知書を、必ず内容証明郵便などで相手に送達させてください。

価格が決まっていなくても、この初動さえ完了すれば、自動承認される最悪の事態は防げます。

税務署はここを見る!買い取り価格「高すぎ・安すぎ」に潜む2大課税爆弾

身内や元役員との話し合いで「お互いが納得した価格ならいくらでもいいだろう」と考えるのは大間違いです。

非上場株の売買価格には、税務署の厳しい目が光っています。

【税務調査の標的】「揉めたくないから言い値で買う」と炸裂する『みなし配当』の罠

親族や元役員と「もう揉めたくないから」と、相手の言い値(法外に高い価格)で会社が自己株式として買い取ってしまうと、税務調査で強烈なペナルティを受けます。

税法上の適正な時価(財産評価基本通達ベースで計算した価格)を超えて支払った金額は、実質的な利益の分配とみなされ、相手方に「みなし配当」としての課税が発生します。

チェック項目 税務調査官が見るポイントとリスク
調査官の視点 会社の「資本金等の額」と「利益剰余金」の内訳を真っ先にチェック
発生するリスク 適正価格を超えた分は配当とみなされ、源泉徴収漏れを指摘される

会社側は、その場で巨額の源泉所得税の追徴課税を食らうことになり、資金繰りが一気に悪化する起爆剤になりかねません。

【逆の罠】「嫌がらせで1円で買い叩く」と会社に降ってくる『受贈益課税』

逆に、「勝手に出ていった元役員の株など、1円で買い叩いてやる」と、あまりに低すぎる価格(あるいはタダ同然)で会社が買い取るのもNGです。

この場合、税務署からは「会社が適正な価値のある資産を、不当に安く手に入れて得をした」と判断されます。

具体的には、適正時価と買い取り価格との「差額」が会社の「受贈益(いわゆる臨時収入)」とみなされ、その差額に対してバッチリ法人税が課されてしまうのです。

高くても安くても税務上の罠があるため、事前の株価算定は必須です。

【シミュレーション】「お金はあるのに買い取れない!?」会計上の『財源規制』という見えない壁

手元の通帳にいくら現金があっても、会社が株を買い取れない法律上の「見えない壁」が存在します。

それが会社法の定める「財源規制」です。

事例:通帳にキャッシュが5,000万円ある「A株式会社」のケース

ある日、元役員から「保有している株を3,000万円で買い取れ」と正式な請求が届きました。社長は会社の通帳を確認し、「キャッシュが5,000万円あるから、3,000万円くらい払えるな」と考え、支払おうとします。

しかし、それを聞いた顧問税理士から「社長、ストップです!それをやると違法になります!」と猛ブレーキがかかりました。

【A株式会社の財務シミュレーション】

  • 会社の現預金: 5,000万円

  • 会計上の「分配可能額」: 500万円(過去の利益の蓄積から計算される上限額)

【結論】

会社法上、会社が自己株式を取得(買い取り)できる金額は、会社が自由に処分できる「分配可能額」の範囲内(この場合は500万円まで)と厳格に決まっています。

そのため、A社は通帳に5,000万円の現金があっても、法律上は500万円までしか株を買い取ることができません。もしこれを無視して3,000万円を支払ってしまうと「違法配当」となり、承認した社長(取締役)が、不足する2,500万円分を個人のポケットマネーから会社へ補填しなければならないという、恐ろしい個人的賠償責任を負うことになります。

【プロが教える防衛策】会社に財源がない、価格で折り合わない時の「2つの解決ルート」

会社に分配可能額(財源)が足りない場合や、買い取り価格の交渉が平行線をたどって決着がつかない場合は、以下の2つの実務ルートで会社を守ります。

ルート①:「指定買取人」として社長個人、または信頼できる別会社が買い取る

会社の「財源規制」によって会社名義での買い取りができない場合の王道テクニックが、この「指定買取人」のスキームです。

会社が不承認の通知を出す際、「会社ではなく、社長個人(またはグループ会社など)を指定買取人として指定します」と通知します。

これであれば、会社法の財源規制を受けないため、社長個人のポケットマネーや、別会社の資金を使って適正価格で株を引き取ることが可能になります。

ルート②:価格が平行線なら「裁判所への価格決定申立て」カードを切る

14日以内に「不承認通知」を出したあと、相手との価格交渉がどうしてもまとまらない場合は、通知を出した日から20日以内に「裁判所へ価格決定の申立て」を行います。

この申立てを行うと、裁判所が選任した専門家などが介在し、公認会計士等の鑑定をもとに客観的な「適正価格」を法律に則って決めてくれます。

相手が感情的になって「1億円で買い取れ!」などと法外な要求を突きつけてきても、この裁判所の手続きを利用すれば、法的な防衛ラインに則った適正な金額(財産評価等に基づいた額)で決着をつけることができます。

まとめ:非上場株の買取請求は「スピード」と「税理士・弁護士の連携」が命

最後に、今回の重要なポイントを振り返りましょう。

  • 14日以内の初動: 価格交渉よりも先に、まずは「不承認通知」を出して自動承認を防ぐ。

  • 税務上の適正時価: 言い値での高額買取は「みなし配当」、安すぎる買い叩きは「受贈益課税」の爆弾を食らう。

  • 分配可能額の確認: キャッシュがあっても、会計上の上限(財源規制)を超えて会社が買うと違法になる。

身内や元役員から「非上場株を買い取れ」という通知書が届いたら、1日でいいので自力で悩むのをやめ、その日のうちに顧問税理士と、会社法に強い弁護士に書面を見せてください。

タイムリミット(14日間)は、通知が届いたその瞬間からすでに始まっています。一刻も早くプロを味方につけて、あなたがこれまで築き上げてきた大切な会社を、毅然とした対応で守り抜きましょう!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。