外国人実習生が本国へ帰国することになり、その「年末調整」の手続き方法でお悩みではありませんか?
「いつも通りの年末調整は12月だから、その時にまとめてやれば大丈夫だろう」と後回しにしていると、実は手続きが間に合わなくなり、税務上のトラブルに発展してしまうリスクがあります。
最悪の場合、本人に還付されるべき税金が戻らなくなったり、会社側が源泉徴収漏れや住民税の徴収ミス、労働基準法違反などの重大なコンプライアンス違反を指摘されたりする可能性もゼロではありません。
そこでこの記事では、外国人実習生の帰国時に行う年末調整の正しい手順と注意点をどこよりも分かりやすく解説します。
実務のタイムリミットや必要書類、法的な落とし穴を事前に押さえ、スムーズに手続きを完了させましょう!

2. 【ステップ1】まずは確認!その実習生は年末調整の「対象」になる?
外国人実習生が帰国する際、全員が年末調整の対象になるのでしょうか?
結論から言うと、実習生は原則として帰国タイミングに関わらず全員が年末調整(随時調整)の対象となります。
日本の税法では、労働者が日本国内に「住所」があるか、または現在まで引き続いて「1年以上居所」を有している場合を「居住者」と呼びます。
技能実習生は「入国時」から居住者扱い
実習生が年末調整の対象になるかどうかを判断する上で、多くの担当者様が「滞在期間が1年未満だと対象外になるのでは?」と誤解しがちです。
しかし、実務上の扱いは異なります。
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通常のケース(年末調整の対象):
技能実習生は通常、1年以上の滞在予定で入国するため、入国したその日から「居住者」として扱われています。
そのため、年の途中で帰国(出国)する際は、出国する時が「12月31日」と同じ扱いになり、その時点で年末調整を行うことが認められています。
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中途帰国により滞在が1年未満になったケース(年末調整の対象):
仮に事情があって1年未満で中途帰国することになった場合でも、入国から帰国までの間は「居住者」の扱いが変わりません。
そのため、過去に遡って手続きをやり直す必要はなく、その出国時にそのまま年末調整を行うことができます。
⚠️ 年末調整の対象外となる例外ケース
最初から1年未満の滞在予定で来日している例外的なケースを除き、実習生の多くは帰国タイミングに関わらず年末調整の対象となります。当初の予定が1年以上であれば、中途帰国であっても居住者として随時調整を進めて問題ありません。
3. 【ステップ2】一番の難所!「国外扶養親族」の控除確認
外国人実習生の手続きで、最も担当者を悩ませるのが「国外扶養親族(本国の家族)」の扶養控除です。
結論として、実習生が本国の家族を扶養に入れている場合、その家族の「年齢」や「送金額」によって控除が受けられるかどうかの条件が厳しく変動します。
特に注意したいのが、30歳以上70歳未満の親族を扶養に入れる場合です。
税制改正により、以下のいずれかの要件を満たしていない限り、扶養控除の対象から除外されることになりました。
30歳以上70歳未満の扶養親族の条件
対象となる親族が30歳以上70歳未満の場合、下記のいずれかに該当する必要があります。
| 分類 | 満たすべき要件 |
| ① 留学生 | 日本から海外へ留学した親族(※実習生の本国家族にはほぼ該当しません) |
| ② 障害者 | 障害者控除の対象となる人 |
| ③ 38万円以上の送金 | 実習生からその親族へ、年間38万円以上の生活費等の送金がある人 |
実務上、多くの実習生が該当するのは「③ 38万円以上の送金」ですが、「家族全員分をまとめて1人に送金した」というのは認められないため注意が必要です。
必ず「扶養に入れたい家族一人ひとり」に対して、それぞれ38万円以上の送金実績が必要になります。
必要書類のチェックリスト(帰国前に必ず回収!)
これらの控除を受けるためには、以下の書類の原本を証明として会社が保管しなければなりません。
本人が日本を発ってからでは回収が不可能に近いため、帰国前に必ず手元に集めましょう。
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親族関係書類: 出生証明書、婚姻証明書など(外国政府が発行したもの)
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送金関係書類: 外国送金依頼書の控え、クレジットカードの利用明細(家族ごとの名義が必要)
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外国語の訳文: 書類が日本語以外で書かれている場合は、その翻訳文

4. 【ステップ3】出国までに終わらせる!年末調整の実務スケジュール
外国人実習生が帰国する際、年末調整の作業は「本人が日本を出国する日まで」にすべて完了させる必要があります。
具体的な実務スケジュールを4つのステップに分けて見ていきましょう。
① 書類の回収
実習生の帰国日が決まったら、すぐに動く必要があります。
「給与所得者の扶養控除等申告書」を記入してもらい、先述した本国の「親族関係書類」や「送金証明書」をセットで回収します。
言葉の壁があるため、早めの声かけが成功の鍵です。
② 最終給与の計算と支給日の調整(★最重要の落とし穴)
帰国日までに支払うべき「最後の給与」を確定させます。
ここで極めて重要なのが、「給与の支給日(支払確定日)」が本人の出国前にあるかという点です。
所得税法上、出国の年末調整に含められるのは「出国までに支払いが確定した給与」のみです。
もし出国後に本来の支給日が到来する場合、その給与は年末調整に含めることができず、帰国後は「非居住者」として一律20.42%の所得税を源泉徴収しなければならなくなります。
これを防ぐためには、就業規則や労使協定の定めに従って、給与の支給日を出国前に前倒しして変更・支給し、出国前に支払いを確定させるという実務上の工夫が不可欠です。
③ 年末調整の計算と過不足金の精算
前倒しして確定させた最終給与の額を含めて、年末調整の計算を行います。
多くの場合、税金が戻ってくる「還付」になりますが、この還付金は出国前に支払う最後の給与に上乗せして精算するのが最もスムーズで確実です。
④ 源泉徴収票の交付
年末調整の計算が終わったら、すぐに源泉徴収票を発行します。
本人が帰国後に本国で手続きをする際や、日本での活動の証明として必要になるケースがあるため、本人が日本を発つ前に必ず手渡してあげてください。
5. 【ステップ4】帰国後のトラブルを防ぐ「源泉徴収票」と「住民税」の対応
無事に年末調整が終わり、実習生を見送った後にも、会社の担当者にはまだ大切な仕事が残っています。
それは、税務署への「源泉徴収票の提出」と、後から請求が来る「住民税」の処理です。
源泉徴収票の書き方のポイント
帰国時の年末調整に伴う源泉徴収票を作成する際は、通常と異なる点が1つあります。
それは、源泉徴収票の「摘要欄」に「出国による退職」と明記することです。これにより、税務署や市区町村に対して「年の途中で年末調整を行った正当な理由」を証明することができます。
住民税の「課税ルール」と精算手続き(時期による法律の違い)
外国人実習生が帰国する際、担当者が最も見落としがちなのが「住民税」の処理です。
住民税は「1月1日時点」に住民票がある自治体から、前年の所得をベースに課税されます。
そのため、年の途中で帰国(出国)した場合、帰国した翌年の住民税は課税されません。
実務上で注意すべきなのは、帰国する「その年の分(未納分)」の住民税です。
本人が日本にいない以上、後から徴収することは不可能です。
そのため、退職時(帰国時)に精算を済ませる必要がありますが、出国する月によって法律上の扱いが明確に異なるため注意してください。
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1月〜5月に出国する場合(一括徴収が義務):
本人の希望や申し出に関わらず、最後の給与や退職金から、その年度の残りの住民税(5月までの未徴収分)を会社がすべて一括徴収することが法律上義務付けられています。
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6月〜12月に出国する場合(本人の同意が必須):
原則は普通徴収(自分で納付)に切り替わるため、最後の給与等から一括徴収を行うには必ず「本人からの申し出(同意)」が必要となります。
⚠️ 6月〜12月出国の強制天引きは法律違反!
実務上は一括徴収してしまうのが確実ですが、6月〜12月に出国する実習生に対し、本人の同意なく勝手に最後の給与から多額の住民税を強制天引きすることは、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反となり、大きなトラブルに発展します。
事前に本人に丁寧に説明して同意書をもらうか、合意が難しければ「納税管理人」を会社の担当者などに指定する手続きを、出国前に市区町村役場で行いましょう。
6. まとめ
外国人実習生の帰国時に行う年末調整は、「前倒しの準備と正しい法律知識」がすべてと言っても過言ではありません。
12月に行う通常の年末調整とは異なり、本人が出国するまでにすべての給与支払いを確定させ、書類を集めて計算を終わらせ、源泉徴収票を手渡すというタイトなスケジュールが求められます。
特に以下の3つのポイントは、実務担当者が絶対に守るべき境界線です。
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中途帰国で滞在1年未満になっても、入国時の予定が1年以上であれば「居住者」として年末調整の対象になる。
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出国後に支給日がくる給与は年末調整に含められないため、就業規則等に基づき支給日を出国前に前倒しする。
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6月〜12月に出国する場合の住民税一括徴収は、労基法違反を防ぐために必ず事前の「本人の同意」を得る。
言葉の壁や本国からの書類取り寄せ時間を考慮し、帰国が決まった段階から逆算して動くことが、会社と実習生双方を守ることに繋がります。
実習生が気持ちよく日本での仕事を終え、笑顔で帰国できるよう、ぜひ余裕を持った前倒しの準備を進めてみてくださいね。