極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置とは?計算方法や令和9年改正まで分かりやすく解説!

「株の譲渡益や不動産売却で大きな利益が出たけれど、税金はいくらになるんだろう?」とお悩みではありませんか?

実は、超高額所得者に対する新しい増税ルールである「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」を把握していないと、想定外の追加課税に慌てることになりかねません。

特に、申告不要制度(特定口座の源泉徴収など)を使っているから大丈夫と思っている方は注意が必要です。

そこでこの記事では、会計事務所の実務目線から、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」の仕組みや計算方法、さらに令和9年からの改正ポイントまで、どこよりも分かりやすく解説します!

極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置とは?

「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」とは、年間で非常に大きな所得を得たハイオーナーや投資家に対し、通常の所得税とは別に追加で税金を課す仕組みのことです。

給与などの収入は、増えれば増えるほど税率が上がっていく「累進課税制度(最大45%)」が使われています。

しかし、株の売却益や土地・建物の売却益には、いくら稼いでも一律15%(地方税除く)の税率しかかかりません。

そのため、「お給料で稼ぐ人よりも、株で何億円も稼ぐ人のほうが、全体で見ると税金の負担割合が低くなってしまう」というアンバランス(いわゆる一億円の壁)が起きていました。

この税負担の不公平をなくし、みんなが納得できるように導入されたのが、この適正化措置です。

令和5年度の税制改正で決まり、令和7年(2025年)分の所得税からスタートしています。

項目 内容
主な対象者

主に株式譲渡や不動産売却などで超高額の所得を得た個人

適用開始時期

令和7年(2025年)分の所得税から適用開始

課税の仕組み

「基準所得金額」から控除額を引き、一定の税率をかけた額が通常の税額を超える場合、その差額を納付

どのような人が対象になる?(課税のボーダーライン)

結論から言うと、年間で「基準所得金額」が3億3,000万円を超える人が対象となります。

「自分はそこまで稼いでいないから関係ないや」と思いがちですが、ここが重要なポイントです。この制度では、お給料だけでなく、株の売却益や不動産の譲渡所得などもすべて1つにまとめて(合算して)計算します。

具体的には、以下のような所得がすべて合計の対象です。

  • 総合課税の所得(事業所得、給与所得、不動産所得など)

  • 分離課税の所得(上場・非上場株式の譲渡所得、土地建物の譲渡所得など)

  • 確定申告不要を選択した所得(特定口座・源泉徴収ありで売却した株式益や配当など)

※ただし、銀行預金の利息などの源泉分離課税対象のものや、NISA口座で得た非課税の利益は合計に含まれません。

税金の計算方法と具体的シミュレーション

極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の税金は、どのように計算するのでしょうか?

計算式自体は、かみ砕くと非常にシンプルです。

国税庁が公表している専用の適用判定表・税額計算書を使って、以下の式で算出します。

追加の所得税額= (基準所得金額-3億3,000万円)×22.5%-基準所得税額

※「基準所得税額」とは、通常の申告(源泉徴収された分も含む)で納めるべき所得税の合計額です。

この計算を行った結果がプラスになった場合、その差額分を追加の所得税として納めることになります。

【実務の裏話】特定口座「申告不要」でもバレる?現場で注意すべき落とし穴

「株式の売却益は特定口座(源泉徴収あり)で取引しているから、確定申告しなければ税務署に把握されないのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、これは大きな落とし穴です。

実務上の結論をお伝えすると、特定口座(源泉徴収あり)で申告不要を選択している場合であっても、本措置の判定においては、それらの所得を含めて計算することが義務付けられています。

申告不要を選択していても本措置の適用対象(基準超え)となる場合は、別途確定申告を行う義務が発生する仕組みになっているため注意が必要です。

会計事務所の現場でも、以下のような相談や見落としが増えると予想されます。

  • 「株の利益は確定申告していないから大丈夫」という思い込み

  • M&Aによる自社株売却や大型不動産の売却タイミングの重複

  • 譲渡損益の繰越控除を使う際の判定タイミング

特に事業承継やM&A、大型不動産の売却を控えている方は、単年で莫大な譲渡益が発生しやすいため、事前のアドバイザリーや税額シミュレーションが不可欠となります。

令和9年分からの税制改正でどう変わる?(最新情報)

令和7年分から適用される本措置ですが、早くも見直しが予定されています。

令和8年度税制改正大綱において、令和9年(2027年)分以降の所得税から、控除額の引き下げと税率の引き上げが行われることが決定しました。

改正前(令和7年・8年分)と改正後(令和9年分以降)の違いは以下の通りです。

項目 改正前(令和7・8年分) 改正後(令和9年分〜)
特別控除額

3.3億円

1.65億円

税率

22.5%

30.0%

分離課税のみの場合の課税ボーダーライン

約9.9億円

約3.3億円

例えば、上場株式の譲渡益が15億円ある場合、改正前は追加税額が約3,825万円であったのに対し、改正後は約1億7,550万円まで跳ね上がります。

課税対象となる人の範囲が広がるだけでなく、税負担が激増するため、高額な資産売却を計画されている方は「いつ売却を実行するか」のスケジュール調整が非常に重要になります。

まとめ

「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」は、一定以上の高額所得者にとって無視できない大きな税制改正です。

令和7年分からの導入に加え、令和9年分からはさらに増税傾向が強まります。特定口座での取引や不動産売却などを組み合わせている場合、予期せぬタイミングで対象になるリスクもあります。

大きな資産の売却やM&Aなどを検討されている方は、自己判断せず、早めに信頼できる税理士などの専門家へご相談されることを強くおすすめします。